豆々通信   [2004年2月号・読み物] 


『人になりそこねたロバ』 
(タゴール暎子・編訳 筑摩書房)

 くしゃみをする時

 ケシャヴァンとムルリダランは、テリチェリーの村に住む農夫です。二人は幼なじみで、畑へ出るのも、帰るのも、いっしょです。
 時は収穫にあたり、その忙しさは、ネコの手もかりたいぐらいでした。いつもならば昼食は家へ帰ってとり、昼寝のひとつもしてから畑へもどってくるのですが、今日はそうもしていられません。かみさんがつくってくれた弁当を、手伝いの少年がとどけにくるのを待って、二人は池の端の大きなバニヤンの木陰で包みをひろげました。
「ハークション!」                
 ケシャヴァンがイドゥリ(蒸した米パン)を口にしたとたん、大きなくしゃみをしました。
「ハークション!」また出ました。
「どうかしたのかい?」ムルリダランが聞きました。
「いいや、食べてる時にくしゃみをするのは、だれかがその人のことを考えてくれてるってことさ。きっと、かみさんがおいらのことを考えているんだろうよ」ケシャヴァンは、自慢げに胸をはりました。
 これを聞くと、ムルリダランはがっかりしました。――うちのやつは、おれのことなんか忘れちまっているにちがいない。こんなに汗水たらして働いているのに・・・。うちに帰ったら、どやしつけてやらあ――。
 夕方、家へ着くなり、ムルリダランは、かみさんをたたき、文句をいいました。
「おまえは、おれのことなんか、ちっとも考えてないんだろう?」
「ばかだねえ、あんたは。働き者の旦那のことを考えないかみさんがあるかね」
「いや、おまえは違う。その証拠に、おれはちっともくしゃみをしないじゃないか。ケシャヴァンのやつめは、昼めしの時だってくしゃみをしてるぞ。あれのかみさんが、よく旦那のことを思ってるからさ」
 彼女はふき出しながら、「ああ、ごめんよ。あたしゃ、ちょっと昼寝をしすぎたんだよ。明日はよくよくあんたのことを思ったげるよ」
 翌日も二人の農夫は、いつものように畑で働き、昼になると、バニヤンの木陰で弁当をひろげました。
 とたんに、ムルリダランは勢いよくくしゃみをしはじめました。くしゃみの連発で、止めようがありません。 じつは、彼のかみさんがこしらえた弁当というのは、ご飯にヨーグルトを混ぜ、そこにいやというほど煎ったトウガラシの粉をふりかけておいたのです。
「やめてくれ、もうおれのことを考えるのはやめてくれ!」ムルリダランは悲鳴をあげました。でも、彼はかみさんの深い愛情を思って、もう二度とたたいたり、文句をいったりすまい、と思うのでした。



旬の野菜で手早くつくる


 ダイエットとかヘルシーと名のつく本は避けて通る。食べるのにいちいち科学的な知識をもちだして、これは体にいい、これはカロリーが少ないなんてことを考えるのは野暮というもの。そう思ってきたが、この本は何だか魅力的に思え、図書館から借りてきて何品かつくってみた。おいしい!かんたん! 旬の野菜でシンプルに料理する、というのは豆料理クラブのポリシーそのもの。おすすめです。レンズ豆のカレーのレシピを同書より引用します。(千晶)

レンズ豆のカレー
【材料】(4人分)
レンズ豆(乾燥) 3カップ、玉ねぎ(スライス) 中1/2個、しょうが(すりおろして) 2p大、トマト(ざく切り) 小1個、サラダ油(orバターまたはギー) 大さじ2、塩 小さじ1、好みでグリンピースやきぬさやなど 適量、クミン(粒) 小さじ1/2、ローリエの葉 2枚、赤唐辛子 2-3個、ターメリック 小さじ1
【作り方】
@レンズ豆を3倍の水に入れやわらかくなるまで10分くらい煮る。この時サラダ油を1滴たらすとふきこぼれにくい。
A鍋にサラダ油を熱しクミン、ローリエ、赤唐辛子を入れる。いい香りがしてきたら玉ねぎを入れて透き通ってくるまで炒める。
BAにトマトを加え、ペースト状になったらしょうがを入れて2−3分炒める。
CBに@の豆を煮汁ごと入れる。次に塩とターメリックを加えて10分ほど煮る。
Dご飯にかける時はスープ状に、チャパティなどのパンといっしょに食べる時は煮汁がなくなるまで煮つめる。好みでグリンピースやきぬさや、コリアンダーの葉などを散らす。


ロイチョウドーリ夫妻著
『インド料理ダイエット・レシピ集 簡単!スパイスCooking』
(スパイク社)


シリーズ・豆日記 隠し味に豆!?(佐藤浩子)

ピーナッツの山   ピーナッツの山

 去年の6月、友達の結婚を祝うため、またコラプールに向かった。
 インドでは同じ先生の下で学ぶと、生徒は先生の子供とみなされる。結婚したその友人たちは私から見ると兄弟に等しい。当然何とかして会いに行く。…そしてあわよくば、奥様たちから家庭料理を習おうと…
 コラプールに到着するとミリンが出迎えてくれた。「久しぶりだね、ギートゥ。今は暑くて植物採集に行かないけど…」うん、それは知ってる。それより、結婚したお祝いに来たのよ!是非、奥さんを紹介して(と土産物を持参)。「おお、すぐワイフに連絡するよ!!明日夕飯をうちでどうだい?」待ってました、その言葉!できたら…料理するところから拝見したいんだけど…「ノープロブレム、恥ずかしがるかもしれないけど、大丈夫、言っとくから」やったー!!
 こうしてインド人に負けないずうずうしさで家庭に上がりこみ、奥さんや子供たちと親しくなる技が身についてしまった。これも豆料理クラブを通してひとえに家庭料理を知りたい、おいしい豆料理を作りたい欲求が生んだ思わぬ業。
 「ジャックフルーツが大安売りで買ってきちゃった」とか、「この野菜食べたことなくって」と言いつつ、知りたいアイテムの材料は手土産に持参。するとマダムたちはスペシャルレシピを紹介してくれるのだ。
ぼーっと突っ立っていてもレシピは手に入らない、こちらから攻撃をしかける。「ここでクミンを入れるとこだけど、今入れたのはひょっとしてアジョワン?」「そう、見抜いたわね。母がこうするの。実家の味…来週妹が来たら一緒に作らない?」という具合にスパイス一つから家族の話題へ、そして次回の予定も。
 ヤダフ先生の奥さんから「何をならってきたの?」と聞かれ、アル・ワダ(インド風コロッケ、10月号スパイス参照)やパオ・バジ(パンと一緒に食べるソース)というと、「みんなコラプール名物よ。2人とも学生時代はひょろひょろだったのに、結婚したら随分太ったわね」と彼女たちの料理に合格点をつけているよう。でも、共稼ぎ新婚夫婦のせいか、おしゃれな軽食風で、イマイチインドらしさに欠ける。「マダム、いつも採集に追われ無理だったけど、今回こそローカルな味を習いたい」「ふふ、じゃあ一緒にマーケットにいくわよ。夕方バス停に来なさい」
 乾期の市場には野菜が少ないものの、お目当ての変な豆を発見。カラスノエンドウとスナックエンドウの中間サイズ。そしてサヤインゲンのような質感。ガワリという、南インドでよく食べる豆で、早速リクエストしてみると…

ガワリスープ(日本ではさやいんげんで代用)
【材料】
さやいんげん すじを取り長さ1・5cmほどに切って2カップほど、ピーナッツパウダー 小さじ1(ミルなどである程度の量をひいておくと便利)、マスタードシード 小さじ1/2、
塩 少々、唐辛子粉 小さじ2−3杯(もしくは子供用に
好みで砂糖小さじ1/2位)
【作り方】
@強火で熱し、ピーナッツ油(なければ普通の油)を鍋底1cmくらい入れ、マスタードシードを加えはじけてきたらさやいんげんをよく炒める。
A塩、唐辛子粉か砂糖、ピーナッツパウダーを加える。
B豆が隠れるほどの水を加えて沸騰させ、味がしみたら出来上がり。


辛みの中の独特の甘みがコラプール料理の特徴。その秘密はたっぷりの唐辛子粉に隠し味のジャグリー(ヤシの蜜)ないし砂糖、そしてピーナッツパウダーが入っている。この辺りはピーナッツの産地で、農家の倉庫には大量に(1年分)保存されている(写真)。前からあんなに一体どうするのか不思議だった謎が解けた。このため真っ赤で見た目辛そうな料理にこくがあり(まるでタヒニを入れたよう)、繊細な味に仕上がっている。チリを控えめにすれば日本人向け!
マダムはガワリの分量を半分に分け、ご主人にはチリのたっぷり入ったスープタイプ(これはオールドタイプ)、息子にはチリ控えめ、ちょっと砂糖を増やして蒸し煮したサブジタイプと味の異なる2種類の料理を作り分けた。「私はどっちでもいいのに、あの人たちは好みを譲らないのよ」とぼやきながらもさっと作り分けてしまう。当然私は両方いただいてしまった…
 採集仲間のワーリー先生宅ではこれによく似た大豆スープを教わった。大豆はゆでて2カップほど。水の代わりに煮汁を使う。スパイスはマスタードシードのほか、カレーリーフ数枚と最後にガラムマサラ小さじ1を加える。唐辛子粉は小さじ1に変更。きっと金時豆などでもおいしそう。さらにピーナッツパウダーの入ったこんなライタまで・・・。

キャベツライタ
【材料と作り方】
@キャベツ(すりおろしてor細かく千切り)カップ2−3くらい用意
Aレモン汁 大さじ3くらい(好みで調節)、ピーナッツパウダー小さじ1、砂糖小さじ1/2、ターメリックパウダー少々を@に加える
B最後にマスタードシード小さじ1/2を少量の油でテンパリング(お玉に入れた油を火にかけて熱し、マスタードシードを加え、はじけたら油ごと@にかける)してよく混ぜ合わせる。


 かんたんでおいしいピーナッツパウダー、いろんな応用がききそう。ねえマダム、前から知りたかった絶品トマトスープだけど…「またいらっしゃい。今度ミリンやガイコッドの赤ちゃんが生まれたら、あなたは赤ん坊の叔母さんになるのよ。そのとき教えてあげるから」…やれやれ、レシピの入手にまた行かなければ…


豆料理クラブ会員・三輪さんのお米は安全でおいしい!

三輪さんの田んぼ

 十数年前よりアイガモ農法で無農薬の米つくりをされている三輪広義さん(日本有機農業研究会会員)は、よその田んぼから水が流れこまない山間の最上流という理想的な環境保全型農業に励んでいられます。
 丹精込めてつくられたお米を、山口市近辺なら無料で配達、遠方の方には送料実費で送ってもらえます。お米は玄米でも白米でも5kg3000円。希望通りに精米して下さいます(我が家は5分づきと玄米を購入しています。とてもおいしい)。
 また米の裏作に麦もつくられていて、今月号の全粒粉は三輪さんの作です。チャパティがおいしい!(4月の豆料理セットにお米を入れる予定です)

【連絡先】 〒747-1232 山口県防府市台道5947   TEL&FAX 0835-32-1299 三輪広義

[HOME] [豆々通信 INDEX]