『ジョン・レノン ラスト・インタビュー』
(中公文庫・池澤夏樹訳)
| Johnパンの作り方をおぼえて、ほんとに興奮したよ、最初にできたパンはポラロイドで写真を撮った。あのふたつは・・・あんな風にできるなんて信じられなかった。 Yoko昔ながらの男の伝統よ、歴史に残したがるのはね。 John興奮したんだよ、男も女もない・・・最初のパンさ。偉大に見えた。味だってよかったよ、ものすごくおいしかった、そこでそれから半年か1年くらいのあいだはぼくが食事の用意をした・・・ヨーコも赤ん坊も、スタッフの連中まで食べたさ。自分にもやれるというんで夢中になってね。(中略) これは大変な経験だったよ。修道院に入るのとまったく同じで、しかも隠棲するのとはちがう(中略)・・・料理をおぼえるというのは禅的な経験で、全精力を1個のパンに注入して・・・正しいやり方で・・・ Yokoしかもすぐになくなってしまう。 Johnえいやっと、できるわけじゃない・・・なんにもないところからはじめるんだ。ピルスベリーかなんかを一袋買ってきてそれをパンにまでするのさ。小麦粉と手だけでやるんだよ、手でね。(中略) とにかくぼくは楽しんでやっていた。あれは一種の訓練。絶対の訓練だとぼくは思っていたし、そういう考え方ではじめたんだ。あそこを通って、ぼくはまったく新しい世界に入ったのさ。 |
| 明日は豆をゆでると決めたら多めに一晩戻します。2−3倍のかさになると思って下さい。かためのうちに火を止め、室温に冷ましたらプラスチック容器やフリーザーパック(チャックの付いた冷凍保存用のビニール袋)に小分けにして冷凍庫へ。大まかな量をテープに書いて貼りつけておくと便利です。冷蔵庫に降ろしておくと一昼夜で解凍でき、スープや煮ものには他の野菜とそのまま並べて調理にかかれます。マリネやペーストなどスパイスやハーブの味をしみこませたい料理のときにも、一旦加熱するとおいしくなります。ただし冷凍・解凍・再加熱の過程で豆の歯ごたえは失われることをご承知おき下さい。 豆の煮汁がおいしいスープベースになることをご存じですか。主役の具の持ち味を圧倒することなく、しかし腹にうったえる深みを提供するスープの名脇役です。滋味が甘味や酸味と同様、味わえることを私が知ったのは、豆の煮汁のスープベースを通してでした。煮あがった豆とは別に冷凍しておくと少々の野菜とおいしい天塩と合わせるだけで、自然の恵みを満喫できます。 お腹ペコペコで家に帰ってわらにもすがる思いでレトルト食品・冷凍食品をあたためたことありますか。そして食後、何か食べた感じがまったくしなかったことは?ペコペコの危機にも豆料理は強い味方。できあがりをとりわけて冷凍しておくと胃袋を絶対に裏切らないファストフードです。 |
| 豆を食べつけない人が豆を食べてよく遭遇するのはガスの問題です。お腹が張る、おならが出る。これは極めて自然なことです。 豆のでんぷん質は煮炊きすることで糖に分解されます。糖をさらに分解・消化するのはヒトの体の消化器系のはたらきによるのですが、消化できない形の糖が体内に入ってきた場合、活躍するのは小腸に棲むバクテリアです。あなたの体がまめにどれほどなじんでいるかによって「難なく消化・吸収」から「バクテリアの助けを借り、その副産物のガスの処理を担当」まで、体はさまざまに反応します。 体が豆になじむのを促しながら気持ちよく豆を食べる知恵は古今東西にいろいろあります。体と相談しながら必要に応じて試してください。 1.少量ずつ食べて体を慣らしていく。 2.慣れるまで、朝食に豆を食べる工夫をする。 3.日頃の運動で消化器系のはたらきも活性化する。 4.小豆、スプリットピー、レンズ豆など比較的消化しやすい豆から親しむ。 5.豆は十分に火を通す。 6.発芽させた豆(もやし)も消化しやすい。 7.にんにく、クミン、コリアンダー、レモン汁、酢、だしこんぶなどを加える。 8.究極の糖抽出法。豆を3−5倍の量の水と合わせて火にかけ、10分沸騰させる。そのまま冷まして24時間室温におき、ゆで汁を捨ててゆすいで豆だけを調理に使う。ただしこの方法によると、栄養分、滋養分も失われます。 繰り返して豆を食べるうち、体は豆にすぐなじみます。自分の体のたくましさにほれぼれすること間違いなし! |
| ターメリック(ウコン) カレーの黄色に欠かせないターメリック。ショウガと同じ仲間で、オレンジ色の根茎を粉にして使います。カレーやピクルス、チーズやお菓子の着色に用いますが、入れすぎると粉っぽく、苦味が強くなるので注意。カレーなどではお湯をさす直前に加えるとぼそぼそしません。 ターメリックには殺菌作用・防腐作用があり、インドでは赤ん坊にターメリックで黄色く染めた産着を着せたり、切り傷にターメリックをすり込みます。よくまっ黄色の顔をした女性が歩いていて驚かされるのですが、ターメリックパックに美白効果(黄色!)あり?ネパールで医療活動をされている日本人の先生によると、冬場チフスやMRSAといった怖い病気にかかりやすいカトマンズではターメリックでマスクを黄色く染めるか、染めたガーゼを間に挟むことでかなりかなり感染を防げるそうです。 またホウレンソウなど緑の野菜を茹でたり煮込むとき、一つまみのターメリックを加えると野菜の色が変わりません。ナスやジャガイモなどを切って水にさらすときも同様の効果があります。 もしもターメリックの根茎を手に入れたら、育ててみましょう。遅霜に気をつけて植えつけ、夏の間に大きくし、再び霜が降りる前に掘り起こします。ゆでるか蒸してから乾燥させて皮をむくとオレンジ色の肌が現れます。 シナモン クスノキと同じ属のシナモンは17世紀になるとスリランカからポルトガルを追い出したオランダ東インド会社の独占貿易となり、余剰分を燃やしたり決まった島以外の林を燃やすほど生産管理を徹底して抑圧しました。18世紀終わりイギリス東インド会社に取って代わられるとジャワやインド・セイシェル諸島にも植えられるようになりました。今でも最大の生産・輸出国はスリランカです。 雨季に収穫が行われ、樹皮をはがして手で巻いたものがシナモンスティックで、枝が細く幹の中心に向かうほど良質のものとなります。 パプリカ パプリカとはハンガリー語で、赤唐辛子を乾燥・粉にしたもの。ハンガリーでは果肉と種子の割合によって6種類ものパプリカ・ペパーがあります。ハンガリーやバルカン地方・スペインで広く使われます。種類によって辛さが異なるので、辛さをチェックしてから分量を決めましょう。 |
| 11月のカルカッタ、ハオラー駅。乗るはずの夜行列車が来ないため仕方なく駅のリタイアリングルームで夜を明かすことに。蒸し暑く、大勢の人でごった返す中、場所を確保してごろ寝する。早朝ぼんやりと外を眺めているとかわいい女の子に声をかけられた。 「ダージリンに行くんでしょ。どう、一緒に?」バウナーは英語が通じないのでこちらもあまり話せないヒンディー語で話していると人だかりができた。 インドの西、グジャラート州から30人ほどの植物学部の学生と教授たち。彼らは野外実習に向かうところだった。たまたま予約しておいた座席が向かいだったこともあり、親しくなった。特に人懐っこいバウナーとはいつも一緒にいた。車内には乗客以外に様々な人が乗り込んでくる。物売りや乞食を筆頭に、バウルと呼ばれる詩を歌う人や勝手に床を掃いたり靴を磨いたりしてお金を稼ぐ人。小太りの教授が巡回マッサージ師に声をかけた。教授がシャツを脱ぐと、マッサージ師は小ビンに入ったどろどろの黒い油を背中に塗り始めた。時々パシッと背中を叩いたり背骨がバキッと音をたてる。太っちょ教授は苦しそうだ。学生達が冷やかし半分見に集まってきた。どうやら払ったお金分のマッサージに耐えられなくなり、代りに男子学生をみてもらったが彼らも嫌がっている。 驚いたことにグジャラートから彼らは皆、たくさんの荷物を抱えていた。平均3つはスーツケース形鞄を持ち、一体何が入ってるのかと思いきや、誰かが開け始めると皆一斉に広げた。鞄の一つは全てお弁当、というよりお菓子に近い。様々な種類の油で揚げた、日本でいえばスナック菓子のような、でもひよこ豆や緑豆の粉で作られかなり重いのだが、それが何種類もビニール袋に詰められている。 インドでは旅行中よその土地の食べ物を口にしない人が結構いる。鍋釜担いで煮炊きを始めようとする人も普通で、車内には煮炊き厳禁と書かれている。誰が作ったか分からない不安はもちろん、地域によってカレーの味がまるで異なるからだ。様々な人のために最小公約数的に調理された駅の弁当は結局誰の口にも合わないことになる。だから保存のきく豆粉煎餅をこんなに持ち込んだに違いない。しかもこれらはすべてお母さんの手作りだとか。親切にもみんなちょっとずつ分けてくれるが、味も形もすべて違う。 何年もあとになってから知ったのだが、この豆粉煎餅、手間がかかる上に熟練された技が必要で、今では家庭ですたれ、専らお菓子屋から買ってくるようになったそうだ。日本のおはぎや餅のような晴れの食事なのかもしれない。しかしこの後半年間インドをあちこちまわり、彼らの故郷グジャラートに行ってみると再びこの豆粉煎餅を今度は家庭でたくさん振る舞われた。グジャラートのカレーは結構甘い上、食事の合間にたくさんお菓子を食べる習慣がある。お菓子好きな人たちだからこそ家庭での味と技が受け継がれているのだろう。 さて列車は真夜中にダージリンの麓に到着した。再び駅に泊まる。今度は駅員にごり押しで汚い倉庫のような場所を提供してもらったが(それもそのはず、本来夜行列車に乗れば昼間ここはダージリン乗り換えの通過駅に過ぎないのだ)、仲間がいればこわくはない。しかしダージリンの麓とはいえカルカッタとは違い、相当冷え込み、寝られるどころではない。東京で霜が降りる頃、インドといえど冬に向かっているのだ。寒さに耐え切れず、夜が明けるとさっさと出発した。 ここからダージリンへはトイ・トレインという、世界遺産に登録されている小さな汽車に乗り、ゆっくり周りの風景を楽しみながら1日かけて山を登る。だが2晩も駅に泊まった我々はもう列車はこりごりとグループに別れてジープを借りることにし、私も何とタダで乗せてくれた。ジープでは4時間でダージリンに到着した。 ダージリンに着くと恐ろしい寒さと客引きが迫ってきた。インドの西の端から東の端へ、平原から標高2000mのヒマラヤへやってきた彼らは生まれて始めての寒さに耐え切れず、早く帰ろうと言い出している。バウナーは泣きべそをかいていた。食欲も衰え、皆例の豆菓子をぽりぽり食べながら、「お母さんのご飯が恋しい」などと言って外で食事をしたがらない。トランクいっぱいに持ってきて正解だったようだ。さらにかわいそうなことに山岳のモンゴロイドの住民(チベット人・ネパール人)は同じ顔の日本人には大変親切なのに下からきたインド人には辛く当たる。宿代をぼったり、言葉が通じないのをいいことに掛け布団を貸そうとしなかったり。いつもは騙す専門の?インド人を立場が逆転すると仕返ししているようである。あまりにひどいので代りに私が抗議しに行く有り様だった。 1週間ほど毎日ジープに乗ってあちこちの山に植物を採集に出かけた。下界の暑い所に比べれば日本で見覚えのある植物が入り交じっているのでほっとする。秋に花を咲かせるヒマラヤ桜やゲンノショウコ、タデやイラクサ、ハヤトウリやコスモスなど。かつての植民地時代にイギリス人が持ち込んだと思われるサボテンやクリスマスに飾るポインセチアが数メートルに大きく茂っている。黄いちごがなってるよ、食べてごらん、とバウナー達に渡すと気味悪がって食べてくれない。グジャラートでは見たことのないから無理もない。教授たちも見知らぬ植物に目をみはり、私が日本から持ってきた小さなカラーの植物図鑑と見比べていた。ダージリンから更に北のシッキムで彼はウルップソウによく似た草を見つけたよ、と指差して教えてくれた。こんな所で日本の植物図鑑が役に立とうとは。 そんな中、ちょっと変わった葉の木を見つけた。葉が蝶の羽のように真ん中で2つにわかれている。「それ?バウヒニアよ」え?バウナー?と聞き間違えるような発音だったので以来この仲間を見るたびにバウナーを思い出すようになった。日本では2つに分かれた葉を袴に見立てハカマカズラ属と呼ぶ。これも豆科の植物でいろんな使い方があるので詳細は次回に。(以下のレシピはおまけです) 豆の粉のヌードル風フライ(ナムキン・チウラ) [材料] 引き割のムング豆(ブラックマッペ) 水に20分ほど浸す ベーサン(ひよこ豆の粉) 皮をむいたピーナッツ 砂糖 適量 塩小さじ 1杯 唐辛子粉 1.ベーサンに塩ひとつまみ(分量外)と水1/3カップを加え、ペースト状にかきまぜる 2.直径20cm程の厚手フライパンにギー(インド風バターオイル、なければ普通の油)1カップほど水を1適垂らすとはじけるくらいに中火で熱する。 3.@を目のあらいこし器(ざるなど)にいれて細いうどん状に押し出してAのギーの中に入れて絶えずかき混ぜて揚げる。こんがりきつねいろになるまで1−2分揚げたら紙タオルにとって油を切る。 4.同じようにピーナッツを揚げる。最後にムング豆の水をきり、紙タオルでたたいて完全に水気を取ってから同様に揚げる。 5.ボールにB・Cと調味料をいれて混ぜ合わせる。 これが豆粉煎餅の基本とも言うべきお菓子です。これに堅さを調節したり指くらいの太さに押し出したり、クミンシードや様々なマサラを加えたり先月紹介したポヘと呼ばれる押飯を揚げたあられを混ぜたりします。 |
| 今月はシナモンが入っていたせいもあり、おやつに力が入りすぎてしまった。ベーキングに縁のない方、ごめんなさい。でも、この機会にぜひ一度おためしになられませんか。私も若い頃はお菓子づくりなんて何だかこっぱずかしくてしたことなかった。それが今は、早起きしてパンにケーキ、ビスケットと続けて焼いたりします。 何てことないスコーンやケーキを習慣的に焼いていると、健康を考えてのことと誤解されがち。お菓子を焼くのは健康のためというより自分でつくるのが楽しいからであり、おいしいからであり、しかも安くつくから。手軽というのを加えてもいいかも。そのへんにある材料で何なりと焼ける。わざわざ買いにいったのが姿・形だけが美しい見かけだおしだったと失望することもありません。 豆好きの我が家は肉を食べる量が比較的少ないのですが、それもまた健康のためというより、豆を料理するのが好きだから。そして肉を食べる量が少ないといっても、私の両親が小さい頃口にした肉よりははるかに多くの肉を子ども達に食べさせてやっているのはまちがいなく、これ以上たくさんの肉を食べるのは自然の摂理に反するという気がしています。 アメリカ人の3人に1人は肥満だという記事を先日新聞で読んだのですが、同じ頃、週刊誌のグラビアでアンゴラ難民の赤ちゃんの写真を見て息がつまりました。死にそうにやせこけ、それでも必死におっぱいに吸いついているのだけれど、その若いお母さんのおっぱいは、しなびてひっぱられてひものよう。 私が肉食をひかえたところで、そのお母さんに食物がとどくわけではないのですが、この世界で正気をたもつ上では、豆を料理し、おやつを焼くことには力があるように思えます。そういう意味では、まさしく健康のためかもしれません。(千晶) |
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